既存住宅瑕疵保険と事故率について
ホームインスペクションと既存住宅瑕疵保険
ホームインスペクションとは建築士などの専門家が住宅の欠陥や劣化、補修が必要な箇所があるかを確認する住宅診断サービスです。
既存住宅瑕疵保険(個人間売買の場合)とは、売主が検査事業者(保険契約者)に瑕疵保険の加入を求めた場合、検査事業者は対象となる中古住宅の検査を実施し、検査によって保険会社が求める検査基準に適合する事が認められた場合、保険に加入して保証を行うサービスです。
検査時に保険基準を満たすことができない場合でも、補修工事を実施し、基準を満たすことが確認できた住宅は保険に加入する事が可能です。
いずれも売買される住宅の状態を把握し、不具合や適切な補修工事を実施する為の参考としてご利用いただくものです。
そうして問題が無くなった住宅に関し、既存住宅瑕疵保証という形で1年又は5年の間、万が一に対する保険をかけていただくことができます。
中古住宅診断の現状
平成30年12月1日の日本経済新聞に「中古住宅の診断普及せず」という記事が出ました。
今年4月から宅建業法の改正に伴い、宅建業者は媒介契約時にホームインスペクション(住宅診断)の説明と実施業者をあっせんできるかできないかを媒介契約書に記載する事が義務付けられています。
しかし、記事で不動産会社は「手間がかかるだけで契約に結び付かない。積極的に調査を促す気は無い。」と答えています。
また、本来は買主の為の調査にも関わらず、売主への説明や同意を得ることの難しさ、業者選定や調査実施までの時間。その結果売買契約が延期になる等、関心があっても利用する事自体が難しいという理由で調査を実施しない買主も多くいます。
現在の中古住宅市場(個人間売買)は売買時の瑕疵担保責任の免責(現状有姿)や、建物の状態が明らかにならない状態での売買等、買主側のリスクが非常に高く、依然として不透明な市場となっています。
そして、記事に出ている不動産会社のように利益優先で、「手間がかかるだけ」と売買主の事も考えずにインスペクションについて説明もなく契約が進められているのが現状です。
保険事故の発生状況や保険事故の支払い状況について
中古住宅の取引において、売買後に不具合の発生を経験される方の割合は概ね5割程度となっています。
中古住宅リフォームトータルプラン検討会(国土交通省)第4回資料
国土交通省から発表された住宅瑕疵担保責任保険の「保険事故の発生状況や保険事故の支払い状況について」の資料では、中古住宅取引の中から保険が付保された住宅に関する不具合(保険事故)の発生率や保険支払額に関する情報が公開されています。
→国土交通省資料
資料によると新築の住宅瑕疵担保保険の保険事故の割合は0.194%、保険金(補修費)の平均支払額は1,127,564円。中古住宅(宅建業者売主型)の保険事故の割合は1.526%、保険金(補修費)の平均支払額は731,783円。中古住宅(個人間売買型)の保険事故の割合は2.672%、保険金(補修費)の平均支払額は1,074,113円となっています。
中古住宅の品質の確保に関して
前述の事故割合を見ればわかるように、新築住宅と比較して中古住宅は8倍~14倍も多く不具合が発生していることがわかります。
流通する中古住宅の1%程度しかホームインスペクションが実施されていない中、さらに既存住宅瑕疵保険に加入する住宅は少数です。それでもその中の2.7%近くの住宅が何らかの補修を行っている事を考えれば、売買契約を交わす前に住宅の品質に対して相互に共通認識を持つことが重要であることがわかります。
ホームインスペクションの意義
最後に、中古戸建て住宅のホームインスペクションで何らかの不具合が発見される割合は、概ね6割から8割程度です。
しかし、全ての住宅で著しい劣化(構造的な欠陥や雨漏れ)が発生しているわけではありません。軽微な修繕や、購入後のメンテナンスで補修すれば問題ないものも沢山あります。
大切なのは住宅購入後にかかるメンテナンスコストがどのくらい必要かを知る事です。既存住宅瑕疵保険の加入も可能であれば、雨漏れ等の大きな損害に対して自己負担なく補修をおこなう事ができます。
このような状況から、少しの手間や売買契約の延期を理由としてホームインスペクションや既存住宅瑕疵保険の加入を検討から除外すことはお勧めできません。
個人間の不動産売買は「自己責任」であることを意識して、賢く・不利にならないようにしてください。